共働きが多い県ほど家計は楽?
収入と支出を分ける
夫婦2人で働けば収入は増えやすい。でも、それだけで家計が楽になるとは限りません。 保育、通勤、外食、住居費。入るお金と出るお金を分けて見ます。
収入が増えても、生活コストも一緒に増えることがあります。
収入は月14万円強増える。でも、支出も増える
共働きの家計は「収入だけ」を見ても分かりません。
実収入と消費支出は同じ月額単位。税・社会保険や世帯属性も異なります。
共働きが多いのは福井。6割を超える
総務省「令和4年 就業構造基本調査」をもとにした都道府県比較では、夫婦共働き世帯の割合は福井県61.2%が最も高く、山形県58.8%、長野県57.4%と続きます。
福井:61.2%
山形:58.8%
長野:57.4%
「夫婦とも働く」が当たり前に近い地域は、たしかにあります。でも、この61.2%は「家計に余裕がある世帯が61.2%」という意味ではありません。
2人で働くと、月の実収入は約14万円増えていた
全国の核家族勤労者世帯を比べた2024年の家計調査では、共働き世帯の月平均実収入は713,215円。世帯主のみ働いている世帯は569,690円でした。
共働き世帯の実収入:713,215円 / 月
世帯主のみ就業:569,690円 / 月
差:143,525円 / 月
興味深いのは、世帯主の勤め先収入です。共働き492,510円、片働き495,110円で、ほとんど差がありません。共働き世帯では、そこに妻の勤め先収入184,271円が加わっています。2人目の収入が家計を押し上げていることは、数字にもかなりはっきり出ています。
でも、増えるのは収入だけじゃない
同じ比較で、消費支出は共働き世帯341,341円、世帯主のみ就業の世帯310,045円。共働きのほうが月31,296円多くなっています。
共働き:341,341円
世帯主のみ就業:310,045円
差:31,296円
共働き世帯では、被服・履物、交通・通信、教育、教養娯楽などの構成比が高いとされています。働く人数が増えれば、通勤や衣服など仕事に伴う支出が増えることもあります。
ただし、ここで「収入差14.4万円 − 消費支出差3.1万円 = 毎月11.3万円得」とは計算できません。税金・社会保険料などの非消費支出や、世帯構成の違いもあるからです。
本当に残るお金を見るなら、税・社会保険料、住居費、保育、車、貯蓄まで入れて比べる必要があります。
福井の家庭に14万円多く残る、ではない
福井県で共働き世帯が多いことと、福井の各家庭に毎月14.4万円多く残ることは全く別です。14.4万円は全国の特定の世帯類型を比べた平均差で、福井県の収入差ではありません。
地域の共働き率には、女性の就業機会、産業構造、三世代同居、保育環境、住宅費、家族観などが関係します。生活費が高いから2人で働くケースもあれば、働き続けやすい環境だから共働きが多いケースもあります。
共働きが多い理由そのものが地域によって違います。だから「共働き率が高い県ほど家計が楽」と一直線には結べません。
お金が増えても、時間が足りないことはある
共働きで世帯収入が増えても、通勤や仕事の時間が増え、家事・育児が片方に偏れば「暮らしが楽」と感じるとは限りません。
逆に、駅や職場が近い、保育園へ送りやすい、買い物が徒歩で済む、家事を分担できるといった条件がそろえば、共働きでも時間の負担を抑えやすくなります。
家計簿には出にくいですが、通勤30分の差や買い物のしやすさは毎日積み重なります。共働きでは、この「時間の出費」もかなり大きいです。
住む場所で見るなら、県の共働き率より通勤
住む場所を選ぶとき、県の共働き率が高いかより、自分たち2人の通勤が成立するかを見るほうが実用的です。
片方の職場に近づいたら、もう片方の通勤が1時間増えないか。車2台が必要にならないか。保育・買い物・通院を仕事帰りに済ませられるか。どちらかが在宅勤務なら、その分だけ駅距離の重みを下げられるか。
共働き率は地域の働き方を知る面白い数字です。でも「家計が楽か」を知りたいなら、自分の収入、支出、時間へ戻す必要があります。
どう検証した?
都道府県の共働き割合は、総務省「令和4年 就業構造基本調査」をもとに統計局が公表している2022年の比較値を使用しました。世帯収支は総務省「家計調査」をもとに厚生労働省「令和6年版 働く女性の実情」が整理した2024年の核家族勤労者世帯の平均値です。地域別の共働き率と全国の世帯収支は母集団も目的も異なるため、両者を相関計算したり、都道府県の家計余裕へ直接換算したりしていません。
使ったデータ
- 総務省統計局「統計クイズ」令和4年就業構造基本調査をもとにした2022年の夫婦共働き世帯割合。
- 総務省統計局「令和4年 就業構造基本調査」地域別・世帯類型別の就業状態を把握する基幹統計。
- 厚生労働省「令和6年版 働く女性の実情」家計調査による2024年の核家族共働き世帯と世帯主のみ就業世帯の実収入・消費支出比較。
- 総務省統計局「夫婦共働き世帯の1か月間の生活費」家計調査での共働き世帯の定義と収支データの案内。
判定:共働き世帯は平均的に収入が高い一方、県の共働き率だけで家計の余裕は判定できません。地域比較には可処分所得、住居・移動費、世帯構成、時間負担まで必要です。