地元愛が強い県はどこ?
人口移動と愛着を分ける
地元を離れない人が多いからといって、地元愛が強いとは限りません。 進学や仕事で県外へ出る人でも、地元が大好きなことはあります。移動と愛着は別の数字です。
行動と感情を混ぜないことが大切です。
地元に残った人が多い=地元が好き、ではない
愛着は人口移動から推測せず、本人へ直接聞くほうが近い。
どこに住んだかを測る。
Well-Being調査で本人に直接質問。
好きでも進学や仕事で出る人はいます。残っているから好きとも限りません。
「転出が少ない=地元愛が強い」は成立しない
地元が大好きでも、大学進学や就職で県外へ出る人はいます。逆に、仕事や家族の事情で地元に住み続けていても、強い愛着があるとは限りません。
つまり人口移動は「どこに住んだか」という行動データであって、「その土地が好きか」という感情データではありません。
転出率、定住率、Uターン率は街の人口動態を見る重要な数字です。でも、それをそのまま愛着の強さへ読み替えることはできません。
2026年度の調査には、「この町が好きか」に近い質問がある
デジタル庁が整備する地域幸福度(Well-Being)指標は、市民の「暮らしやすさ」と「幸福感」を主観・客観の両面から可視化する仕組みです。
2026年度の自治体向けアンケート調査票では、「地域の人間関係」の設問として、次のような5段階評価が使われています。
設問:「私は、この町内(集落)に対して愛着を持っている」
回答:非常にあてはまる / ある程度あてはまる / どちらともいえない / あまりあてはまらない / 全くあてはまらない
「好きですか?」にかなり近い問いです。少なくとも、人口流出から推測するより直接的です。
しかも、愛着だけを単独で見ていない
同じ「地域の人間関係」には、同じ町内の人への信頼、地域活動への参加、困ったときに相談できる人、困っている人を手助けする、といった設問もあります。
地元愛は、観光名所を誇りに思うことだけではありません。近所への信頼、相談相手、地域活動など、暮らしの中の関係性と一緒に見るほうが意味が分かりやすくなります。
信頼:同じ町内の人たちを信頼している
参加:地域活動への市民参加が盛ん
相談:困ったときに相談できる人が身近にいる
助け合い:町内の人が困っていたら手助けする
愛着:この町内に対して愛着を持っている
では、この数字で「地元愛ランキング」を作ればいい?
そこも慎重に扱う必要があります。デジタル庁は、地域幸福度指標を自治体間の優劣比較やランキング付けに使うことを目的としていません。
公式サイトでも、開発目的の一つとして「ランキングではなく、自治体が個性を磨く機会を創出」と明記しています。
標本数や回答者構成、自治体独自調査と全国調査の違いもあります。1位から47位まで並べるより、「この地域では何に愛着を感じ、どこに弱さがあるか」を読むための指標です。
「県民性」にすると、さらに粗くなる
同じ県でも、県庁所在地、郊外、山間部、離島では地域との関わり方が違います。若い単身者と、同じ町内に30年住んだ人でも違うでしょう。
「○○県民は地元愛が強い」という一言にすると、県内の違いが全部消えます。
地域幸福度指標が「町内(集落)」という言葉を使っているのは、実際の人間関係が県単位よりずっと小さな範囲で生まれるからだと考えると分かりやすいでしょう。
好きでも、仕事や進学で離れることはある
地元への愛着が強くても、仕事がなければ離れる人はいます。病院や公共交通が減れば、高齢になってから住み続けるのが難しくなることもあります。
反対に、移住先に最初は愛着がなくても、近所づきあいや行きつけの店、仕事、風景を通じて後から愛着が生まれることもあります。
「好き」と「住める」を分けると、地元愛を人口維持の責任にしなくて済みます。
住むなら、「地元愛1位」より自分が好きになれそうか
移住先を選ぶとき、全国一の地元愛県を探す必要はありません。
歩いて好きな店へ行ける。顔見知りができそう。自分の趣味に合う場所がある。景色や季節が好き。地域の人間関係が濃すぎず薄すぎない。そうした条件のほうが、自分がその街を好きになる可能性に近いでしょう。
Life Fit Japanで扱いたいのも、「県民性として愛着が強いか」ではなく、自分と街の相性です。
どう検証した?
2026年度の地域幸福度(Well-Being)指標アンケート調査票で、「私は、この町内(集落)に対して愛着を持っている」という主観設問が使われていることを確認しました。また、デジタル庁の公式説明・利用規約で、地域幸福度指標は自治体間の優劣比較やランキング付けを目的としないことを確認しています。人口移動や将来人口を地元愛の代理指標にはしていません。
使った資料
- デジタル庁「地域幸福度(Well-Being)指標とは?」主観指標・客観指標の構成と、「ランキングではなく個性を磨く」開発目的。
- デジタル庁「2026年度全国調査データ(主観)を公開しました」2026年7月16日に2026年度主観データを公開。
- 高森町「令和8年度 地域幸福度(Well-Being)アンケート調査票」設問36「私は、この町内(集落)に対して愛着を持っている」など、2026年度の実際の設問。
- デジタル庁「利用規約・免責事項」自治体間の優劣比較やランキング付けなどへの利用を目的外としています。
判定:「地元愛日本一」を人口統計から決めることはできません。愛着は主観調査で直接測れますが、公的Well-Being指標を自治体ランキングへ転用するのも適切ではありません。