LIFE FIT DATA 11 / 食・嗜好

「酒飲み県」はどこ?
販売量と実際の飲酒を分ける

「酒豪県」と聞くと高知や秋田を思い浮かべますが、販売量の上位は少し意外です。 ただし、その地域で売れた酒の量と、住民が実際に飲んだ量は同じではありません。

公開日:2026年9月19日 更新日:2026年9月26日
まず、ここだけ販売量が多い県を、そのまま「酒飲み県」とは呼べません。

観光・飲食店・人口流入まで混ざる数字だからです。

結論2024年度の酒類販売量は、成人1人あたり東京98.6Lで全国1位でした。ただし「東京の人が日本一飲む」という意味ではありません。飲食店、観光、出張客などの消費も入った「売れた量」のランキングです。
2024年度・成人1人あたり販売数量

販売量1位は東京。全国平均は74.8L

「県民が飲んだ量」ではなく、その地域で売れた酒類の数量です。

東京98.6L
青森95.7L
富山94.1L
宮崎92.7L
全国74.8L

国税庁「酒のしおり」。飲食店・観光客など住民以外の需要も含みます。

販売量1位は東京。青森、富山、宮崎が続く

国税庁「酒のしおり」2026年版に掲載された、2024年度の成人1人あたり酒類販売(消費)数量を見ると、上位は次の通りです。

2024年度 成人1人あたり酒類販売数量

1位 東京:98.6L
2位 青森:95.7L
3位 富山:94.1L
4位 宮崎:92.7L
5位 岩手:89.6L
6位 高知:88.5L
7位 北海道・秋田:85.1L
9位 新潟:82.6L
10位 鹿児島:81.6L
全国平均:74.8L

「酒豪県」のイメージに近い高知や秋田も上位ですが、1位は東京。ここで県民性だけでは説明できないことが分かります。

東京1位。でも「都民が一番飲む」ではない

この統計は、その地域で販売された酒類の数量を成人人口で割ったものです。東京都内の飲食店で、旅行者や出張者が飲んだ酒も販売量に入ります。

繁華街、観光地、ホテル、飲食店が多い地域では、住民以外の需要が数字を押し上げる可能性があります。

分母は住民、分子は「地域で売れた酒」

この組み合わせだから、販売量をそのまま「住民1人が一年で飲んだ量」とは読めません。

ビール1Lと焼酎1Lも、同じ「1L」

98.6Lという数字は、ビールも清酒もワインも焼酎も、酒類の容量を合計したものです。

同じ1Lでも、ビールとウイスキーではアルコール濃度が大きく違います。健康影響を考えるなら、本来は純アルコール摂取量へ直して比較する必要があります。

したがって「販売量が多い県ほどアルコール健康障害が多い」と、そのまま別の統計へつなぐこともできません。

何を飲むかで、上位の顔ぶれも変わる

同じ2024年度でも、清酒だけを見ると新潟県が成人1人あたり7.7Lで最多。秋田6.4L、石川・長野6.0Lなどが続きます。

2024年度 清酒・成人1人あたり販売数量

新潟:7.7L
秋田:6.4L
石川・長野:6.0L
山形:5.8L
福島:5.6L

「酒飲み県」を全酒類で決めるか、日本酒で決めるか、焼酎で決めるかで答えは変わります。ランキングは、定義を決めた瞬間に作られます。

飲酒習慣を知りたいなら、販売量ではなく人に聞く

住民が実際にどれくらい飲んでいるかを知りたいなら、飲酒頻度や1日当たりの飲酒量を本人に尋ねる健康調査のほうが問いに近くなります。

ただし都道府県別に、同じ年・同じ標本設計で十分な人数を確保した最新の飲酒量データは、販売統計ほど簡単にはそろいません。

データがない部分を、販売量で代用して「県民が飲む量」にしてしまうより、ここは区別を残すほうが正確です。

「酒に強い県」は、さらに別の話

たくさん売れること、よく飲むこと、アルコールを分解しやすい体質であること。この3つは別です。

体質には個人差が大きく、県平均の販売量から「この県の人は酒に強い」と判断することはできません。

県民性の記事でいちばん危ないのは、行動の統計を性格や体質へ飛ばすことです。

分かるのは、「その地域で酒がどれだけ売れたか」

販売量の地域差そのものには意味があります。飲食・観光が盛んな地域、酒文化が強い地域、特定の酒類がよく売れる地域など、地域の消費市場を見る材料になります。

だから数字を捨てる必要はありません。ただし名前を正しく付けます。「日本一の酒豪県」ではなく、「成人1人あたり酒類販売数量1位」。それだけで記事の精度がかなり上がります。

どう検証した?

国税庁「酒のしおり(令和8年7月)」の2024年度成人1人あたり酒類販売(消費)数量表を確認しました。これは主として国税庁統計年報の販売数量を成人人口で割った地域指標です。住民個人の飲酒量、純アルコール摂取量、アルコール分解能力とは異なるため、それらへの読み替えはしていません。

使ったデータ

判定:販売数量の地域差は比較できます。ただし「県民が飲んだ量」「純アルコール摂取量」「酒の強さ」には読み替えません。

「酒豪県」を決める前に、その数字の中身を見る。

売れた量、飲んだ量、酒の強さ。似ているようで、全部ちがう数字です。

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