塩辛いものを食べる県は短命?
塩分と寿命を分けて見る
塩分をとりすぎると血圧が上がる。これは大事な話です。 でも、そこから「塩辛い県ほど短命」と県単位へ広げると、寿命はそんなにきれいには並びません。
個人と地域平均を分けます。
47都道府県を並べても、塩分と寿命はほぼ並ばない
数字はわずかにマイナス。でも「塩分が多い県ほど短命」と言えるほど強くありません。
2024年の食塩摂取量 × 2020年平均寿命。因果関係を示す値ではありません。
東北は、実際に塩分がやや多め
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」の年齢調整値では、全国平均は男性10.5g/日、女性8.9g/日でした。
全国:男性10.5g / 女性8.9g
秋田:11.7g / 9.8g
青森:11.0g / 9.1g
岩手:11.0g / 9.7g
沖縄:9.3g / 7.8g
秋田、青森、岩手はいずれも全国平均より高めです。「東北は塩分が多い」というイメージには、数字の裏付けがあります。
でも、塩分が同じでも寿命は違う
2020年平均寿命は、秋田県が男性80.48年・女性87.10年、青森県が79.27年・86.33年、沖縄県が80.73年・87.88年でした。
一方、男性の食塩摂取量が秋田と同じ11.7gの山梨県は、男性平均寿命81.71年。塩分が同程度でも寿命は同じになりません。
食塩摂取量と平均寿命の単純相関は、男性約-0.10、女性約-0.12でした。
相関は男性-0.10、女性-0.12。かなり弱い
相関係数が-1に近ければ「塩分が多い県ほど寿命が短い」という並びが強く、0に近ければその並びは弱くなります。
男性:r ≈ -0.10
女性:r ≈ -0.12
対象:47都道府県
塩分が多いほど寿命が短い方向には少し傾いています。ただ、その傾きはごく弱く、県の寿命差を塩分だけで説明できる数字ではありません。
寿命は、塩分だけで決まらない
平均寿命には、喫煙、飲酒、肥満、運動、所得、医療、事故、がん、心疾患など、いくつもの要因が重なります。塩分だけを取り出して県の寿命を説明するのは難しいのです。
さらに「2024年に何g食べたか」と「2020年の平均寿命」を比べています。平均寿命は、その年まで長期間に積み上がった死亡率の結果なので、現在の食塩摂取量と時間軸もずれています。
県平均の相関が弱くても、個人の血圧に対する塩分の影響が消えるわけではありません。
だからといって、「減塩しなくていい」ではない
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の食塩相当量の目標は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満です。
男性:7.5g/日未満
女性:6.5g/日未満
2024年全国平均:男性10.5g / 女性8.9g
全国平均は男女とも目標を上回っています。また厚生労働省は、高血圧予防に食塩制限が重要だとしています。
今回弱かったのは「県の塩分量」と「県の平均寿命」の並びです。減塩そのものの意味を否定する結果ではありません。
「ラーメン県だから塩分県」でもない
食塩はしょうゆ、みそ、漬物、加工食品、外食など多くの食品から入ります。ラーメンのスープも一例ですが、一品目だけで地域の食塩摂取量を代表させることはできません。
逆に「薄味の料理が多い県」でも、加工食品や外食が多ければ総摂取量は高くなることがあります。
ラーメン、漬物、味噌汁といった目立つ食べ物だけで決めず、1日の食事全体を見る必要があります。
住んでいる県より、毎日の食べ方を見る
住む場所を選ぶとき、「塩分県だから健康に悪い」と県を避ける必要はありません。
食塩摂取は自分で変えられる生活習慣です。むしろ、健診を受けやすいか、徒歩で買い物できるか、医療へアクセスしやすいかなど、日常の健康行動を続けやすい環境を見るほうが実用的です。
どう計算した?
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」第68表の男女別・都道府県別・年齢調整済み食塩摂取量と、「令和2年 都道府県別生命表」の男女別平均寿命を47都道府県で対応させ、Life Fit JapanがPearson相関を計算しました。食塩摂取量は2024年、平均寿命は2020年で対象年が一致しないため、因果推定には使っていません。
使ったデータ
- 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査報告」第68表。20歳以上の都道府県別・男女別・年齢調整済み食塩摂取量。
- 厚生労働省「令和2年 都道府県別生命表」2020年の47都道府県別平均寿命。
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」成人の食塩相当量の目標量。
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」高血圧予防と減塩の位置づけ。
判定:県平均では食塩摂取量と平均寿命の関係は弱く、「塩分県だから短命」という単純説は支持しません。一方、個人の高血圧予防としての減塩は別のエビデンスに基づく健康対策です。