野菜を食べる県ほど健康?
47都道府県で見てみる
「野菜をよく食べる県は長寿」。いかにも正しそうですが、47都道府県を並べると意外ときれいには並びません。 野菜は大事。それでも、地域の寿命を一つの食品だけで説明するのは難しいです。
県平均には、運動・所得・医療など他の条件も混ざります。
47都道府県を並べても、「野菜多め=長寿」にはならない
県平均では、男女とも相関はほぼ0です。
2024年の年齢調整済み野菜摂取量 × 2020年平均寿命。県平均の単純相関です。
野菜を食べる量には、県ごとにかなり差がある
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」の年齢調整値では、20歳以上の野菜摂取量は全国平均で男性270g、女性251gでした。
福島・男性:356g
長野・女性:322g
全国:男性270g / 女性251g
和歌山・男性:220g
和歌山・女性:204g
県によって100g以上の差があります。ここだけ見れば、「野菜が多い県は健康そう」という発想が出るのも自然です。
長野だけ見ると、たしかに話は合う
長野県は2024年の野菜摂取量が男性313g、女性322g。2020年の平均寿命は男性82.68年、女性88.23年で、どちらも全国平均を上回ります。
野菜摂取量:長野 男313g / 女322g、全国 男270g / 女251g
平均寿命:長野 男82.68年 / 女88.23年、全国 男81.49年 / 女87.60年
長野だけを見れば、「野菜が多い長寿県」という物語はきれいに成立します。問題は、それが全国でも同じように並ぶかです。
でも47県に広げると、相関はほぼゼロ
2024年の男女別野菜摂取量と、2020年の男女別平均寿命を47都道府県で対応させ、Pearsonの相関係数を計算しました。
男性:r = +0.06
女性:r = -0.02
対象:47都道府県
順位で比べるSpearman相関でも、男性+0.07、女性-0.06。県平均では、野菜摂取量と平均寿命が同じ順番に並んでいるとは言いにくい結果です。
一つの県で2つの数字が高くても、それだけで全国的な関係は証明できません。全件を並べると、印象が変わります。
福島は男性356g。でも寿命順位は高くない
2024年の男性野菜摂取量が最も多い福島県は356g。一方、2020年の男性平均寿命は80.60年で全国45位でした。
反対に、男性平均寿命1位の滋賀県82.73年は、2024年の野菜摂取量266gで全国平均270gをわずかに下回ります。
この2県だけで逆の結論を作るのも危険ですが、「野菜摂取量だけで県の平均寿命順位は説明できない」ことは分かります。
ここを「野菜は意味がない」と読むのは違う
今回比べたのは、2024年の県平均の野菜摂取量と、2020年の県平均寿命です。同じ人を追跡したデータではありません。
平均寿命には、喫煙、飲酒、塩分、運動、所得、職業、医療、年齢構成など多くの要因が混ざります。県平均同士で相関がほぼゼロでも、個人の食生活と健康の関係まで否定することはできません。
しかも野菜摂取量の調査には標本誤差があります。たとえば福島県男性356gの95%信頼区間は299〜413gと幅があります。順位を1g単位で競うような読み方にも向きません。
「健康な県ランキング」を一品目で作らない
地域の健康を考えるなら、野菜だけではなく、食塩、歩数、喫煙、肥満、健診、医療へのアクセスなどを分けて見たほうがよいでしょう。
健康行動はまとまって現れることもあります。野菜を多く食べる人が運動もしている、所得や教育環境が違う、といった条件が重なれば、一つの食品だけの効果を県比較から切り出すのは難しくなります。
「○○を食べる県は長寿」という県民性ストーリーより、複数の生活習慣を同じ条件で見るほうが、検証としては強くなります。
どう計算した?
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」第67表の男女別・都道府県別・年齢調整済み野菜摂取量と、「令和2年 都道府県別生命表」の男女別平均寿命を47都道府県で対応させ、Life Fit JapanがPearson相関とSpearman順位相関を計算しました。野菜摂取量は2024年、平均寿命は2020年で対象年が一致していないため、因果推定には使いません。
使ったデータ
- 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査報告」第67表。20歳以上の都道府県別・男女別・年齢調整済み野菜摂取量。
- 厚生労働省「第4部 都道府県別結果」野菜摂取量の平均値、標本数、95%信頼区間。
- 厚生労働省「令和2年 都道府県別生命表」2020年の男女別・47都道府県平均寿命。
判定:県平均では野菜摂取量と平均寿命はほぼ相関しません。ただし、対象年が異なる地域相関なので、個人の野菜摂取の健康効果を否定する結果ではありません。