「貯金好きな県」はどこ?
金融資産と所得を分けて考える
貯金が多い県を、そのまま「貯金好き県民」と呼ぶのは少し雑です。 金融資産は長年の積み上げ。そもそもの所得が高ければ、貯められる額も増えます。県民性と家計条件を分けて見ます。
所得・年齢構成・住宅事情なども影響します。
貯金が多い県は、収入も高い傾向が強い
弱い相関だけではありません。この組み合わせは明確に右側です。
2019年の年間収入 × 金融資産残高。相関は因果関係を示すものではありません。
金融資産は、神奈川と沖縄で約2.7倍
総務省「2019年 全国家計構造調査」の総世帯では、1世帯あたり金融資産残高のトップは神奈川県1,607.7万円。続いて奈良県1,564.5万円、愛知県1,557.3万円、富山県1,546.5万円、岐阜県1,480.5万円でした。
神奈川:1,607.7万円
奈良:1,564.5万円
愛知:1,557.3万円
富山:1,546.5万円
東京:1,420.7万円
沖縄:603.6万円
最上位と最下位は約2.7倍。ここだけ見ると、地域ごとの「貯める気質」を想像したくなります。
でも、収入も同じ方向にかなり動いている
同じ調査の年間収入では、東京都629.7万円が最多。神奈川県615.4万円、愛知県613.4万円、富山県612.4万円と続き、沖縄県は423.3万円で最少でした。
47都道府県について「年間収入」と「金融資産残高」を対応させて計算すると、Pearsonの相関係数はr=+0.80。所得の高い地域ほど金融資産残高も高い、かなり強い並びがあります。
年間収入 × 金融資産残高:r = +0.80
対象:47都道府県(n=47)
調査:2019年 全国家計構造調査
これだけでも、「残高が多い=節約好き」とは言えない理由が見えます。そもそも貯める前の収入額が地域で違うからです。
所得だけでも説明しきれない。そこがまた面白い
相関が+0.80でも、順位が完全に一致するわけではありません。東京都は年間収入1位なのに金融資産は9位。奈良県は年間収入25位でも金融資産は2位です。
ここには世帯主の年齢、世帯人数、住宅取得の時期、相続、金融資産の運用、負債などが混ざります。同じ調査でも、世帯主の年齢が高くなるにつれて家計資産総額が増える傾向が確認されています。
今ある金融資産は、今年の節約だけでできた数字ではありません。これまでの所得、年齢、住宅、負債、相続、運用などを積み重ねたストックです。
本当に「貯金好き」を測るなら、残高だけでは足りない
性格に近い問いをしたいなら、単純な残高より「収入のうちどれだけを貯蓄に回したか」というフローを見るほうが近づきます。それでも、子育て期か老後か、住宅ローンを返しているかなどで数字は変わります。
さらに都道府県比較なら、年齢や所得、世帯構成をそろえて比べたいところです。「同じくらい稼ぎ、同じ年代の世帯が、どれだけ資産を残しているか」まで条件をそろえて初めて、地域の貯蓄行動について少し踏み込めます。
今回の公開集計だけで「○○県民は倹約家」と性格診断するのは、統計が言っている範囲を越えます。
大事なのは、県民性より自分が毎月いくら残せるか
住む場所を選ぶとき、「貯金が多い県」を探す必要はありません。自分の手取りに対して家賃がいくらか、車が必要か、通勤費はいくらか、日常の買い物にどれだけかかるか。その組み合わせで、毎月残せるお金が変わります。
県の金融資産ランキングは興味深いデータです。でも、引っ越しただけで貯金体質になるわけではありません。街選びなら、「その地域で自分の家計がどうなるか」に戻したほうが実用的です。
どう計算した?
総務省「2019年 全国家計構造調査」の総世帯について、都道府県別の1世帯あたり年間収入と金融資産残高を47都道府県で対応させ、Life Fit JapanがPearsonの相関係数を計算しました。単純相関であり、世帯主年齢、世帯人数、住宅、負債などは調整していません。金融資産残高は2019年10月末時点、年間収入は2018年11月から2019年10月までの収入です。
使ったデータ
- 総務省統計局「2019年 全国家計構造調査 結果の要約」都道府県別年間収入・金融資産残高、全国の金融資産分布、年齢階級別家計資産。
- e-Stat「1世帯当たり年間収入額(都道府県)」都道府県別の所得集計。
- e-Stat「1世帯当たり資産現在高・負債現在高(都道府県)」金融資産・負債を含む都道府県別集計。
判定:金融資産残高には大きな地域差がありますが、「貯金好き県民性」のランキングとはしません。所得との強い相関があり、年齢や世帯構成なども調整されていないためです。