持ち家率が高い県ほど豊か?
47都道府県で検証
家を持っていることと、現金や預金が多いことは同じではありません。 47都道府県の持ち家率と金融資産を重ねると、関係は思ったほど強くありません。
住宅資産、金融資産、所得はそれぞれ別のものです。
持ち家が多い県ほど金融資産も多い、とは言いにくい
「持ち家県ほど資産家」と一直線には並びません。
2018年持ち家率 × 2019年金融資産残高。年齢・所得などは調整していません。
持ち家率は、秋田77.3%・東京45.0%
総務省「2018年 住宅・土地統計調査」では、居住世帯のある住宅に占める持ち家の割合は全国61.2%でした。
秋田:77.3%
富山:76.8%
山形・福井:74.9%
全国:61.2%
東京:45.0%
沖縄:44.4%
日本海側の県で高く、大都市を抱える都府県で低い傾向があります。ここだけ見ると、「家を持てる地域ほど豊か」と読みたくなります。
でも金融資産を重ねると、順位がかなり崩れる
2019年全国家計構造調査の総世帯では、金融資産残高1位は神奈川県1,607.7万円、2位奈良県1,564.5万円、3位愛知県1,557.3万円でした。
一方、持ち家率1位の秋田県は金融資産956.7万円で40位。持ち家率45.0%と低い東京都は1,420.7万円で9位です。
秋田:77.3% / 956.7万円(金融資産40位)
富山:76.8% / 1,546.5万円(4位)
東京:45.0% / 1,420.7万円(9位)
沖縄:44.4% / 603.6万円(47位)
富山のように両方高い県もあれば、秋田や東京のように大きく順位がずれる地域もあります。
47都道府県で計算すると、相関は+0.23
2018年の持ち家率と2019年の金融資産残高を47都道府県で対応させ、Pearsonの相関係数を計算するとr=+0.23でした。順位だけで比べるSpearman相関も+0.19です。
Pearson:r = +0.23
Spearman:ρ = +0.19
対象:47都道府県
方向としてはプラスですが、強い関係ではありません。「持ち家率が高ければ金融資産も高い」と一直線に並ぶデータではありませんでした。
持ち家率は、何%の住宅が持ち家かを示す割合です。家の市場価値、住宅ローン残高、預貯金の額までは分かりません。
なぜずれる? 住宅価格と年齢が混ざるから
同じ「家を1軒持つ」でも、東京の住宅と地方の住宅では取得価格も資産価値も違います。住宅価格が低い地域なら、所得が全国トップでなくても持ち家率は高くなり得ます。
さらに持ち家率は年齢の影響を強く受けます。若い世帯は賃貸が多く、年齢が上がるほど住宅取得を終えた世帯が増える。高齢世帯の多い地域では、所得とは別に持ち家率が上がりやすくなります。
つまり持ち家率には、住宅市場、人口構成、都市化、世帯構成などが混ざっています。「豊かだから持ち家が多い」と原因を一本にすることはできません。
本当の資産を見るなら、家だけでも預金だけでも足りない
金融資産だけでも豊かさの全部ではありません。家計の資産を見るなら、預貯金や有価証券などの金融資産に、住宅・土地の資産を加え、住宅ローンなどの負債を差し引く必要があります。
持ち家率が高くてもローン負担が大きい世帯はあります。逆に賃貸でも金融資産を多く持つ世帯はあります。「持ち家か賃貸か」だけでは家計の純資産は決まりません。
全国家計構造調査でも、家計資産総額は金融資産だけでなく、金融負債、宅地資産、住宅資産を合わせて捉えています。
住むなら「持ち家率」より、自分が買うか借りるか
持ち家率の高い県へ移れば、自分も豊かになるわけではありません。購入するなら、価格、修繕費、固定資産税、将来売れるか、車が何台必要かまで見ます。
賃貸なら、家賃だけでなく住み替えやすさや、年齢を重ねた後も借りやすいかを見る。持ち家と賃貸は「豊かな方を選ぶ」二択ではなく、自分の家計と暮らし方に合わせる選択です。
どう計算した?
総務省「平成30年住宅・土地統計調査」の47都道府県別持ち家住宅率と、「2019年全国家計構造調査」の総世帯・都道府県別金融資産残高を対応させ、Life Fit JapanがPearson相関とSpearman順位相関を計算しました。持ち家率は2018年10月1日、金融資産残高は2019年10月末時点で、基準時点が約1年ずれています。また年齢、所得、住宅価格、負債などを調整していない地域単位の比較です。
使ったデータ
- 総務省統計局「平成30年 住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」都道府県別の持ち家住宅率。全国61.2%、秋田77.3%、東京45.0%など。
- 総務省統計局「2019年 全国家計構造調査 結果の要約」47都道府県の総世帯・金融資産残高。
- 総務省統計局「2019年 全国家計構造調査 関連情報」所得、金融資産・負債、住宅・宅地資産の調査概要と統計表。
判定:持ち家率と金融資産には弱い正相関がありますが、「持ち家率が高い県ほど豊か」という強い関係ではありません。住宅価格、年齢、負債を含む資産構造を分けて見る必要があります。