暑い地域ほど睡眠時間が短い?
南ほど短い、ではなかった
暑い夜は寝苦しい。なら、暖かい地域ほど睡眠時間も短そうです。 ところが都道府県平均を並べると、南の県が短いわけではありません。東京や神奈川のほうが短めです。
通勤、働き方、生活時間など別の要因も大きそうです。
睡眠を削るのは、暑さだけとは限らない
代表例を並べると、気候以外の時間制約が見えてきます。
神奈川は7:48。20分の差。
全国1:19より21分長い。
都道府県平均。暑さと睡眠の因果をこの2例だけで示すものではありません。
2021年、南の鹿児島は全国3位の長さ
総務省「令和3年 社会生活基本調査」の10歳以上・土日を含む週全体平均では、睡眠時間が最も長かったのは青森県8時間08分。秋田県8時間06分、鹿児島県8時間05分と続きます。
青森:8時間08分
秋田:8時間06分
鹿児島:8時間05分
沖縄:8時間01分
全国:7時間54分
東京:7時間48分
神奈川:7時間48分
「暖かい県ほど短い」なら鹿児島や沖縄が下位に来そうですが、実際は逆です。
10年前も、東京・神奈川は短めだった
一度だけの偶然かを見るため、2011年の同じ社会生活基本調査も確認します。当時の全国平均は7時間42分。鹿児島県は7時間51分、沖縄県7時間42分でした。
一方、東京都は7時間37分で41位、神奈川県は7時間31分で47位。2021年だけでなく、10年前にも似た並びがありました。
鹿児島:7:51 → 8:05
沖縄:7:42 → 8:01
東京:7:37 → 7:48
神奈川:7:31 → 7:48
これだけで「都市部だから眠れない」と因果を決めることはできません。ただ、少なくとも気候の南北だけでは説明しにくい結果です。
睡眠を削っている候補の一つが、通勤時間
2021年調査では、平日に通勤・通学した人の平均時間は、神奈川県が1時間40分で全国最長。東京都と千葉県は1時間35分、埼玉県1時間34分でした。
一方、山形県と宮崎県は56分。睡眠時間だけで見ると山形8時間03分、宮崎7時間59分で、どちらも全国平均を上回ります。
神奈川:1時間40分
東京:1時間35分
埼玉:1時間34分
全国:1時間19分
山形・宮崎:56分
もちろん通勤だけが睡眠時間を決めるわけではありません。仕事時間、年齢構成、家事・育児、夜型生活なども混ざります。ただ、「暑さだけを見るより、1日の時間配分を見る」という方向はかなり合理的です。
「暑い夜は眠れない」と「暖かい県ほど睡眠が短い」は別
ここは混ぜるとややこしくなります。気温が高い夜に寝つきや睡眠の質が悪くなることは、個人の夜ごとの変化として研究できます。一方、都道府県の年間平均睡眠時間は、その地域に住む人の仕事、通勤、家族構成、生活時刻など全部を含んだ数字です。
たとえば沖縄の人が暑い夜に睡眠の質を落としていたとしても、起床時刻や通勤時間など別の条件によって、年間の平均睡眠時間は長くなり得ます。
暑さの影響を直接調べるなら、同じ人について「暑かった夜」と「涼しかった夜」の睡眠を比べる設計が必要です。県の年間平均どうしを重ねるだけでは、気温の効果を切り出せません。
街選びなら、暑さと睡眠を別々に見る
暑さが苦手なら、熱帯夜や真夏日が少ない街を選ぶ意味はあります。でも「睡眠時間を長くしたいから北へ住む」という結論にはなりません。
睡眠に関係しそうな生活条件としては、通勤時間、始業時刻、騒音、住居の断熱・空調、夜間の街の明るさなどもあります。街選びでは「暑さ」と「時間の余白」を別の条件として見るほうが、暮らしに近い比較になります。
どう検証した?
総務省「社会生活基本調査」の2011年・2021年の都道府県別1日当たり睡眠時間を比較しました。2021年については同じ調査の平日通勤・通学時間も確認しています。睡眠時間は10歳以上、土日を含む週全体の平均。通勤・通学時間は平日に通勤・通学を行った人の行動者平均です。気温との因果効果を推定した分析ではないため、「熱帯夜が何分睡眠を削るか」といった結論は出していません。
使ったデータ
- 総務省統計局「生活トリビアランキング」2021年の47都道府県別睡眠時間。
- 総務省統計局「令和3年 社会生活基本調査 結果の概要」都道府県別の通勤・通学時間など。
- 総務省統計局「平成23年 社会生活基本調査 47都道府県ランキング」2011年の都道府県別睡眠時間。
- 気象庁「過去の気象データ検索」気温や熱帯夜など、気候条件を別に確認するための一次資料。
判定:県平均では「暑い地域ほど睡眠時間が短い」は支持されません。暑い夜の短期的影響と、地域の年間平均睡眠時間は別の問いとして扱います。