LIFE FIT DATA 27 / 健康・気候

日照時間が短い地域ほど
心の不調が多い?

曇りの日が続くと、気分まで沈みやすい。そんな感覚はあります。 でも県別データで確かめようとすると、年齢や季節、観測地点など、そろえる条件が意外と多いです。

公開日:2026年9月19日 更新日:2026年9月26日
まず、ここだけ日照と心の状態には研究テーマとして意味があります。でも県ランキングにするのは簡単ではありません。

条件をそろえない比較は、かなり誤解を生みます。

結論日照と心の状態を県別に見る材料は揃ってきました。ただし、県庁所在地の日照時間とK6の割合をそのまま並べるだけでは粗すぎます。年齢、観測地点、季節をそろえてから比べる必要があります。
正しく比較するための条件

材料は揃った。でも、まだそのまま比べない

データがあることと、そのまま相関を取ってよいことは別です。

MENTAL / 心の状態K6を年齢標準化

県ごとの年齢構成差を除く。

WEATHER / 日照同時期・県単位へ集約

観測地点と季節をそろえる。

この2条件を整えてから、所得・単身・睡眠なども調整して検証します。

「心の不調」を患者数で測るのは、やはり危ない

患者調査は、医療機関を受診した人を測る統計です。精神科や心療内科が多い地域、受診への抵抗が少ない地域では、症状が同じでも患者として把握されやすくなります。

逆に医療機関が遠い地域では、不調があっても受診しない人が統計に出にくくなります。

受療率 ≠ 不調の発生率

「患者が多い県」をそのまま「心を病みやすい県」と呼ぶと、医療アクセスまで性格や気候のせいにしてしまいます。

2025年には、住民へ直接聞いたK6の県別表がある

厚生労働省「令和7年 国民生活基礎調査」の健康票には、K6と呼ばれる心理的苦痛の尺度を使った「こころの状態」があります。

e-Statの表126では、12歳以上について、こころの状態の点数階級を都道府県・21大都市、性、年齢10歳階級別に集計しています。

2025年 国民生活基礎調査・表126

対象:12歳以上
指標:K6による「こころの状態」点数階級
地域:47都道府県+21大都市(再掲)
分解:性・年齢10歳階級

これは患者数より、「住民自身の心理状態」を見る問いに近いデータです。

それでも「メンタルが悪い県ランキング」にはしない

都道府県ごとに年齢構成が違います。高齢者が多い県と若者が多い県を、そのままK6割合で比較すると、地域差と年齢差が混ざります。

幸い表126は年齢階級別なので、比較するなら年齢標準化ができます。ここを飛ばして「A県は心の不調が多い」と言う必要はありません。

日照側も、「県庁所在地1地点」で県全体を代表できない

気象庁の日照時間は観測地点ごとです。県内でも日本海側と山間部、沿岸部で気候が大きく違う地域があります。

県庁所在地の観測所だけを県民全体の「日照曝露」とすると、住んでいる場所との差が大きくなることがあります。

日照側でそろえたい条件

地域:県内複数地点または面的な気象データ
期間:K6調査時期と対応する年・季節
指標:年間日照だけでなく冬季日照も検討
曝露:屋外に出る時間までは気象データだけで分からない

見るなら、年間より冬の日照のほうが問いに近いかもしれない

この俗説が気にしているのは、たいてい「冬に曇天が続く地域」です。

年間合計で夏の日照まで足してしまうと、冬季の特徴が薄まることがあります。季節性を検証したいなら、12〜2月など冬季の日照時間と同じ時期の心理状態を対応させる設計のほうが自然です。

年間平均だけで「暗い県・明るい県」とラベルを貼るのは粗い見方です。

日照以外の条件も、心の状態と一緒に動く

所得、失業、単身世帯、睡眠、年齢、健康状態、社会とのつながりなども心理状態と関係します。

雪が多い地域では外出しにくさも加わるかもしれませんし、大都市では単身世帯や長い通勤時間が影響する可能性もあります。

日照とK6に相関が出ても、それだけで「日照不足が原因」とは言えません。

では、このテーマは検証不能なのか?

いいえ。2025年のK6都道府県表が公開されたことで、以前よりずっと検証しやすくなっています。

次に行うべき分析

1:K6を年齢標準化
2:同時期の日照データを県単位へ集約
3:冬季と年間を分ける
4:所得・単身・睡眠などを調整
5:単純相関と調整後の関係を分けて示す

この条件がそろった時点で、初めて「日本では日照の少ない地域ほど心理的苦痛が多いか」をかなり正面から検証できます。

住むなら、「曇りが多い=心に悪い」と決めつけない

日照は、気分だけでなく洗濯、外出、冬の暮らしやすさにも関わります。だから街選びの条件として重視するのは合理的です。

ただし、地域の住民を「心を病みやすい」とラベル付けする必要はありません。

自分が曇天にどれくらい影響を受けるか、冬でも外出しやすいか、医療や人とのつながりを保てるか。個人の相性へ戻して考えるほうが実用的です。

どう検証した?

心の状態について、厚生労働省「令和7年 国民生活基礎調査」健康票の都道府県別表126にK6点数階級が公表されていることを確認しました。気象側は気象庁の観測地点別日照時間を使用できます。ただし本記事では年齢標準化済みK6と県単位の日照曝露をまだ作成していないため、相関係数は提示していません。患者調査の受療率も「不調の多さ」の代理には使っていません。

確認した資料

判定:2025年のK6県別データにより検証可能性は上がりましたが、年齢標準化・気象データの県集約・季節対応を済ませる前に「日照の短い県ほど心の不調が多い」とは結論づけません。

曇りの日が苦手なら、その感覚も街選びの条件になる。

日照、雪、暑さ、医療。自分が苦手な気候まで分けて比べます。

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