LIFE FIT DATA 28 / 健康・医療

病院が多い県ほど長生き?
病床数と平均寿命で検証

病院が多い県ほど長生きしそうですが、47都道府県を並べると単純な関係ではありません。 病床数は医療需要や高齢化の影響も受けます。

公開日:2026年9月19日 更新日:2026年9月26日
まず、ここだけ病床数の多さは、そのまま“健康な県”ランキングにはなりません。

必要な医療が多いから病床が多い場合もあります。

結論人口10万人あたりの病床数と平均寿命の相関は、男性-0.30、女性+0.05。「病床が多い県ほど長寿」という並びは見えません。ただし、男性のマイナスを「病院が多いと寿命が縮む」と読むのも違います。
47都道府県の相関

病床が多い県ほど長寿、にはならなかった

男性はむしろ弱い負相関、女性はほぼ0です。

男性
−0.30
女性
+0.05

2020年の病院病床数(人口10万人あたり) × 2020年平均寿命。因果関係ではありません。

1位と1位ではなく、47都道府県を全部見る

2020年の病院病床数は、全国平均で人口10万人あたり1,195.1床。最も多い高知県は2,328.8床、最も少ない神奈川県は800.8床でした。約2.9倍の差があります。

同じ2020年の都道府県別生命表では、平均寿命の最長は男性が滋賀県82.73年、女性が岡山県88.29年です。

47都道府県を使った単純相関(Pearson)

男性: r = -0.30
女性: r = +0.05
対象:47都道府県(n=47)
比較年:2020年

男性は弱い負の相関、女性はほぼゼロです。少なくとも、この2つの公的統計をそのまま重ねた限りでは、「病床が多いほど平均寿命も長い」という並びにはなりませんでした。

実際の県を並べると、単純ではない

病床数が多い県だけを見ても、平均寿命は同じ方向にはそろいません。

2020年 病院病床数 / 平均寿命(男・女)

高知:2,328.8床 / 80.79年・87.84年
鹿児島:2,025.1床 / 80.95年・87.53年
熊本:1,883.7床 / 81.91年・88.22年
滋賀:982.3床 / 82.73年・88.26年
神奈川:800.8床 / 82.04年・87.89年

高知は病床が全国で最も多い一方、男性の平均寿命は80.79年。熊本は病床が多く、女性の平均寿命も88.22年と長い。滋賀は病床数が全国平均を下回りながら、男性の平均寿命が全国で最も長い。ひとつの指標では説明しきれないことが分かります。

男性-0.30でも、「病床が多いと短命」ではない

ここがいちばん大事です。男性で負の相関が出たからといって、「病床が多い地域は寿命を縮める」とは言えません。

病床数は、住民の健康だけで決まる数字ではありません。高齢者や慢性期患者の需要、地域の医療政策、病院の配置、精神科や療養病床の多さなどが混ざります。病気の人が多いから医療資源が多くなる、という逆向きの関係もあり得ます。

さらに、所得、喫煙、食生活、運動、職業、都市化、気候など、寿命に関係する別の条件も県ごとに違います。今回の相関は、それらを調整していない「県単位の素朴な比較」です。

相関は、原因の向きを教えてくれない

今回分かるのは「2つの数字が県別にどう並ぶか」までです。病床数を増減させれば寿命がどう変わるか、という因果効果を示した分析ではありません。

そもそも「病床」には、かなり違うものが入っている

2020年の全国1,195.1床には、一般病床だけでなく、精神病床、療養病床、感染症病床、結核病床が含まれます。全国値の内訳は、一般病床703.9床、精神病床257.2床、療養病床229.2床などです。

救急搬送を受ける急性期病院が近いことと、人口あたりの総病床数が多いことは同じではありません。「病院が多い」という言葉だけでは、日常で欲しい医療の近さを測れないのです。

住むなら、県の病床数より「家から通えるか」

暮らしの安心に近いのは、県全体の病床密度より、自宅から必要な医療へ実際に行けるかです。

たとえば、内科や歯科へ普段どう通うか。総合病院まで車なしで行けるか。夜間や休日に受診できる場所があるか。専門診療が必要になったとき、電車やバスで無理なく通えるか。高齢になって運転をやめた後も同じです。

病床数は地域医療を見る入口にはなります。ただ、引っ越し先を決める数字としては粗すぎます。Life Fit Japanで医療を見るときも、市の平均だけで終わらせず、駅や生活圏から医療機関へ届く距離を重ねて見る必要があります。

今回の検証で、言えること・言えないこと

言えること:2020年の47都道府県を単純比較すると、病院病床数が多いほど平均寿命が長い、という関係は確認できません。

言えないこと:病床が多いことに健康効果がない、病床を減らすと寿命が延びる、という因果関係はこの分析からは分かりません。

「病院が多い=長寿」と一行で片づけるのも、「相関がない=病院は意味がない」と反対側へ飛ぶのも、どちらもデータの読みすぎです。

どう計算した?

厚生労働省「令和2年医療施設(静態・動態)調査」の都道府県別・人口10万人あたり病院病床数と、「令和2年都道府県別生命表」の男女別平均寿命を47都道府県で対応させ、Life Fit JapanがPearsonの相関係数を計算しました。重み付けなし、交絡要因の調整なしの単純相関です。生命表は2019〜2021年の死亡数と2020年国勢調査人口などを基礎に作成されています。

使ったデータ

判定:「病院が多い県ほど長生きする」は、2020年の都道府県単純比較では支持されません。ただし本分析は地域相関であり、医療資源の因果効果を測ったものではありません。

県に病院が多いかより、自宅から通えるか。

医療、家賃、交通、気候。実際の生活圏まで下げて比べます。

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