「田舎では車必須」は本当?
県平均と生活圏を分けて考える
地方で車が必要な地域が多いのは事実です。でも「地方ならどこでも車必須」ではありません。 県平均では車依存が高くても、駅前や中心市街地まで絞ると、車なしで暮らせる生活圏が残ることがあります。
「地方かどうか」ではなく、実際に住む生活圏で見ます。
車だけで通う人は、山形80.6%・東京8.8%
「地方は車必須」の強さは、地域によって大きく違います。
国勢調査。通勤・通学者の「自家用車のみ」利用割合。
山形80.6%、東京8.8%。差は9倍以上
2020年国勢調査では、15歳以上の通勤・通学者のうち、利用交通手段が「自家用車のみ」の人は全国48.2%でした。
山形:80.6%
秋田:79.6%
富山:79.5%
全国:48.2%
大阪:19.3%
神奈川:19.0%
東京:8.8%
39道県で50%を超えています。「地方では車を使う人が多い」は、かなり数字に沿った話です。
逆に鉄道だけなら、東京48.0%
「鉄道・電車のみ」は全国17.6%。東京都48.0%、神奈川県35.8%、大阪府30.9%でした。
同じ通勤・通学でも、東京圏や大阪圏では鉄道が日常の足になり、地方では車がその役割を担っています。これは単に好みの違いではなく、路線網、駅の密度、職場や住宅の立地が違うためです。
ここはぼかさなくていい部分です。通勤・通学の交通手段には大きな地域差があります。ただし、県平均から個々の住所の必要性までは分かりません。
車の保有台数も、福井1.670台・東京0.405台
2025年3月末の自家用乗用車は、全国で1世帯あたり1.009台。福井1.670台、山形1.617台、富山1.616台、群馬1.558台に対し、東京は0.405台です。
通勤手段と保有台数の両方で、大都市圏と地方の差はかなり大きい。だから「地方で車が必要になる可能性は高い」という前提は、街選びで無視しないほうがいいでしょう。
県平均80%でも、駅前に住む人まで同じとは限らない
ここからが住む場所選びです。国勢調査は山形県全体、秋田県全体という大きな単位で集計しています。しかし人が住むのは県平均の中ではなく、一つの住所です。
地方都市でも、駅前や中心市街地にスーパー、ドラッグストア、病院、飲食店、バスが集まっていれば、車なしで日常生活が成立する場所があります。逆に大都市圏でも駅から遠い住宅地では、買い物や子どもの送迎に車が欲しくなることがあります。
「地方だから車必須」では粒度が粗い。「この生活圏で車なしが成立するか」まで降りる必要があります。
車なしで暮らせるかは、毎日の行き先で決まる
見る場所は難しくありません。通勤先、スーパー、病院、日用品の店、役所・金融。この5つへ徒歩・自転車・公共交通で無理なく届くかを確認します。
さらに、バスが「ある」だけでは足りません。平日朝だけでなく、夜、土日、雨の日でも使える本数か。駅まで坂がきつくないか。高齢になって自転車を使わなくなっても通えるか。ここまで見ると「車必須」の意味が具体的になります。
仕事:通勤を鉄道・バス・徒歩で完結できるか
買い物:食料と日用品が徒歩圏か
医療:普段の診療所と総合病院へ届くか
交通:夜・土日にも使える本数があるか
将来:自転車や車を使えなくなっても暮らせるか
市ではなく駅まで見る理由が、ここにある
市全体の交通スコアだけでは、車の必要性をうまく判定できません。同じ市でも、中心駅徒歩圏と郊外ではスーパーまでの距離も鉄道本数も違います。
だから「○○市は車社会」で終わらず、駅・生活圏まで降りて、買い物、医療、交通、坂を重ねる必要があります。地方の中にある「車なしで暮らせる小さな島」を見つけるのが、生活圏分析の役割です。
どう検証した?
総務省「令和2年国勢調査」の15歳以上通勤者・通学者について、都道府県別の利用交通手段を確認しました。車保有は自動車検査登録情報協会の2025年3月末・自家用乗用車の世帯当たり普及台数を使用しています。どちらも都道府県単位なので、個別住所の「車必須」を直接測る指標ではありません。
使ったデータ
- 総務省統計局「令和2年 国勢調査 最終報告書・利用交通手段」都道府県別の自家用車のみ・鉄道電車のみの割合。
- e-Stat「令和2年国勢調査 表17-1 利用交通手段」全国・都道府県の通勤通学交通手段の詳細表。
- 自動車検査登録情報協会「令和7年 自家用乗用車の世帯当たり普及台数」2025年3月末。登録車と軽自動車の合計。
判定:地方で車依存が高い、は支持されます。「地方ならどこでも車必須」は支持しません。最終判定は駅・住宅地・生活圏単位で行います。