甘いもの好きな県ほど糖尿病が多い?
菓子支出だけでは分からない
甘いものが好きなら、糖尿病も増えそう。そう考えたくなります。 でも菓子に使った金額は、砂糖を何gとったかではありません。糖尿病も、甘いもの一つで決まる病気ではありません。
支出額と実際の摂取量を分けて考えます。
お菓子代と糖尿病率。並べるだけでは答えにならない
支出額は糖の摂取量ではなく、糖尿病は個人の血糖状態です。
価格・贈答・世帯人数も混ざる。
個人の糖尿病リスクを測る。
2024年の全国推計では「糖尿病が強く疑われる者」は約1,100万人。
お菓子を多く買った=糖を多くとった、ではない
総務省の家計調査では、チョコレート、ケーキ、せんべい、アイスなど、さまざまな菓子類について都市別の年間支出額を比較できます。
ただし、支出額は食べた糖のグラム数ではありません。価格の高い菓子を少量買う世帯と、安い菓子を大量に買う世帯では、同じ金額でも摂取量が違います。
菓子代には価格、贈答、家族人数、商品構成が混ざります。本人がどれだけ糖を摂取したかは分かりません。
菓子以外の糖もある
甘味の摂取は菓子だけではありません。清涼飲料、加糖コーヒー、菓子パン、外食デザートなどもあります。
逆に「甘くない」食品でも、ご飯や麺などの炭水化物は消化後に血糖へ影響します。
糖尿病のリスクを「ケーキ代」「チョコ代」だけで代表させると、食事全体をかなり取りこぼします。
2024年、糖尿病が強く疑われる人は約1,100万人
厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」では、「糖尿病が強く疑われる者」は全国で約1,100万人と推計されました。
糖尿病が強く疑われる者:約1,100万人
糖尿病の可能性を否定できない者:約700万人
糖尿病が大きな健康課題であることは間違いありません。ただし、この全国推計と都市別菓子支出を直接つないで地域相関を作ることはできません。
「患者数が多い県」でも答えにはならない
患者調査で糖尿病の受療者が多い県を見つけても、それは発症率そのものではありません。
高齢者が多い、健診受診率が高い、病院へ行きやすい、治療を継続する人が多いといった条件でも患者数は変わります。
地域比較をするなら、年齢調整した有病率や血糖指標を、同じ地域単位でそろえる必要があります。
糖尿病は、「甘いものだけ」で決まらない
厚生労働省の予防資料では、糖尿病予備群から2型糖尿病への進行を防ぐ基本として、食生活と運動の改善が挙げられています。特に肥満を伴う場合は減量が重要です。
食事:総摂取エネルギー・食事全体
体格:肥満・体重増加
活動:運動・日常の身体活動
年齢:年齢構成
体質:遺伝的背景など
「甘い物を食べたから糖尿病」という一品目だけの説明では足りません。
とはいえ、甘いものを気にしなくていいわけでもない
県ランキングで直接の関係が作れないことと、個人の食生活を整える必要がないことは別です。
菓子や甘い飲料が総摂取エネルギーを押し上げ、体重増加につながるなら、結果として2型糖尿病リスクへ関わる可能性があります。
ここでも「地域相関」と「個人の健康行動」を同じ証拠で語らないことが大切です。
本当にこの問いを検証するなら
必要なのは、同じ個人について食事と健康を同時に測るデータです。
摂取:菓子・飲料を含む糖類や総エネルギー
健康:HbA1c・空腹時血糖
調整:年齢、BMI、運動、家族歴など
追跡:数年間の発症有無
都市の菓子代と県の患者数を貼り合わせるより、はるかに問いへ直接答えられます。
住む県より、健診や運動を続けやすいか
住む街によって糖尿病になる、という単純な話ではありません。
歩いて買い物できるか、健診を受けやすいか、運動できる場所があるか、医療へ通いやすいか。自分の生活習慣を整えやすい環境を見るほうが実用的です。
どう検証した?
総務省「家計調査」の菓子類都市別支出と、厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」の糖尿病に関する全国推計を確認しました。患者調査についても、受療者数は発症率・有病率そのものではないため、都市別菓子支出との相関には使っていません。支出額を糖類摂取量へ換算していません。
確認した資料
- 総務省統計局「家計調査 品目別地域ランキング」2023〜2025年平均。都市別・二人以上世帯の菓子類支出。
- 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査 結果」糖尿病が強く疑われる者約1,100万人、可能性を否定できない者約700万人。
- 厚生労働省「令和5年 患者調査」医療機関の受療状況。疾病の発症率そのものではありません。
- 厚生労働省「糖尿病になる前に」解説資料2型糖尿病予防では食生活・運動、肥満を伴う場合の減量が基本。
判定:「菓子支出の多い地域ほど糖尿病が多い」という地域相関は、指標と地理単位がそろわないため作りません。個人の糖尿病リスクは食事全体・体重・活動などを合わせて考えます。